トラウマ 治療 克服

トラウマとは?

誰しも悲しい体験や辛い記憶を持っているでしょう。ですがほとんどの人は普段生活している上でそれらの事を思い出すことはありません。例え思い出したとしても、悲しい気持ちにはなるかもしれませんが、生活に支障をきたすようなことにはなりません。
ですが、その体験があまりに突然であまりに大きな喪失を伴うものの場合、その体験はトラウマとして記憶されていまいます。トラウマというものが単なる悲しい記憶と違うのは、本人がコントロールできないほどに心身に悪影響を与えてしまうことです。突然、トラウマになった時の体験を鮮明に思い出したり、それが元で重度の不安感に襲われてパニックになってしまったりと症状は様々です。
トラウマやそれが原因で発症するPTSD(心的外傷後ストレス障害)は明確な治療法はありません。心理的デブリーフィングと呼ばれる認知行動療法があります。これはトラウマになった体験を専門家に話しながら回想することで精神の回復をはかるものです。ですがこの方法はタイミングも難しく、場合によってはトラウマを悪化させるだけの場合もあります。
また、薬物療法などもありますが、日本では使用できる薬剤も少なく、副作用もあるのであまり積極的には行われていないようです。病院によっては健康保険の適用外になる場合がありますので注意してください。
大事なのは悲しみや心の傷、辛かったり恥ずかしい記憶から目を背けずしっかりと受け止めることです。自分ひとりだけではなく、周囲の人たちや専門医と協力して時間をかけて
いきましょう。
そのためにもトラウマとは何か、それによって引き起こされる症状としてはどんなものがあるのか、といった情報を紹介しています。それらがすべてトラウマ解消につながるわけではありませんが、自分の中で起きていることが何なのかを知っておくのはとても大事なことでもあります。
自分自身だけでなく周りにそういう人が居る場合にも、トラウマによって起きるかもしれないいろいろなことを知っておけば、必ずその人の助けになることでしょう。

トラウマの原因は?

ちょっとした会話や文章で「それが原因でトラウマになってしまった」なんて見聞きしたりしますが、実際にはどのようなことが原因でトラウマ症状を起こしてしまうのでしょうか。トラウマといっても症状は様々で、もちろんその原因になる事柄も人それぞれです。
ひとつの原因として考えられているのが「突然見舞われた事故や不幸が原因で身近な人を失う」というものがあります。日本では近年起きた大規模な地震と津波が記憶に新しいと思いますが、ああいった大規模な自然災害以外でも、交通事故や火事などは毎日どこかで起きている身近な問題です。
こうした事件に巻き込まれて大事な人を失ってしまうのは誰しも大きな悲しみに包まれます。また、自殺の場合などは「もしかしたら自分が止められなかったから…」と自分を責めてしまい、後悔の念からトラウマになってしまうことがあるのです。
直接の知人ではなくてもこうしたことは起きてしまいます。仕事がら人の死に触れることが多い警察官や消防士などは定期的なカウンセリングが必要になることも多いのです。
また、突然起きたことが原因ではない場合もあります。「日常的にストレスや不安を抱え続けている」という場合です。
例えば「いじめ」や「失恋」などが解りやすいでしょうか。いじめも命にかかわらないようなものだとしても、本人にとってはかなりの苦痛です。恋愛だって失恋した過程によっては異性とのコミュニケーションに不具合が出てしまうくらいの拒絶反応を示してしまうかもしれません。
その他にも受験や昇進試験の失敗、慣れない海外への長期出張など、何でもない人にしてみたら不思議に思うようなことでも本人にとってはトラウマになってしまうことが大いにありえます。そして日常のちょっとしたことがきっかけで心身ともに不安定になり、酷い時には日常生活に支障をきたしてしまうのです。
何でもかんでも簡単にトラウマとひと括りにしてしまう風潮も問題ですが、その一方で実際にトラウマに悩まされている人が居ることも忘れないでおきましょう。

トラウマの語源は?

よく「トラウマになった」なんて言葉を見聞きしますが、そもそも「トラウマ」ってなんのことなんだろう、と思ったことはないでしょうか。意味としては「心理的な大きなダメージを受けた状態、そしてそれによる影響が長期間続くこと」みたいな感じなのは知っている人も多いでしょう。精神的外傷なんて言い方もしますね。
当然ですがこれらの文面にはトラウマなんて単語は出て来ませんし、どう考えても日本語とは思えません。かといって英語という感じでもないような気がします。それもそのはずで、元々はギリシャ語で「傷」を意味する言葉だったそうです。なぜ英語でもなく、医学用語として多く使われているドイツ語でもなくギリシャ語なのでしょうか。
それは心理学者として有名なフロイトが「精神分析入門」という本の中で使い始めたのが広まったものなのです。フロイトといえば心理学者の中でも最も有名で、その名前くらいは心理学に詳しくなくても聞いたことがある人も多いと思います。
最近ではPTSD(心的外傷後ストレス障害)という言葉も良く聞くようになりました。このPTSDはトラウマとは違うのでしょうか。どちらも何となく「精神的にダメージを受けている状態」な印象を持ちますが、どちらも指している状態が違うのです。
例えばトラウマというのは「事故で家族を失った悲しみによる心的外傷」のことですが、PTSDの方は「事故で家族を失った悲しみを時間が経ってからも思い出して身心に不調が出る」となります。
つまりトラウマとは精神的な傷そのものであり、PTSDはその傷によって引き起こされる目眩や嘔吐、パニックなどを指すのです。トラウマが原因でPTSDになることはありますが、PTSDの原因すべてがトラウマによるものではないということを注意しましょう。
とはいえ、専門家でもなければそんなに厳密に使い分ける必要はないかもしれません。最近ではトラウマよりもPTSDの方が通りが良いのでそちらを使うようにしても大きな問題はありません。

PTSDとは?

PTSD(心的外傷後ストレス障害)とはどのようなものなのでしょうか。よくトラウマと混同されがちですが、それについての違いは「トラウマの語源は?」で説明していますので、興味のある方はそちらを参考にしてください。
ここではPTSDの症状について説明していきたいと思います。PTSDの症状としては「感情の麻痺」「過覚醒」「フラッシュバック」などがあり、何かのきっかけでトラウマに関する記憶が蘇ってしまうのです。そしてこれらの行動は無意識的に行われるので、本人がPTSDの発症をコントロールするのはほとんど不可能なのがこの症状の厄介なところなのです。
「感情の麻痺」とはトラウマから身を守るために感情の起伏がなくなってしまうことを指します。この状態になると何事にも興味を示さず、それにともなって対人恐怖症や引きこもりなどを引き起こしやすくなります。
「過覚醒」は今この瞬間にもトラウマとなった事故や災害が起きるのでは、と極度の警戒状態になってしまうことです。あらゆる物事に対して敏感になり、ちょっとしたことで極端にびっくりしてしまいます。
「フラッシュバック」は突然周りから自分が切り離されたような精神状態になり、トラウマになった瞬間が脳内で鮮明に再現されてしまいます。それによって忌まわしい体験をリアルに追体験してしまい、パニック状態になってしまいます。
こうした症状が不意に現れるだけではなく、感情の高ぶりによって常にイライラしたり逆に無気力になってしまったり、睡眠障害なども併発してしまいます。こういった状態が1ヶ月以上継続してしまうとPTSDと認定されるのです。
こうした定義はありますが、PTSDの原因ははっきりとはしていません。同じような悲惨な体験をしても発症する人としない人が居ますし、本人の性格や家庭環境といった要因も関わってくるからです。
そのため安易な自己判断は危険です。前述のような症状に心当たりがある人は、まずは専門病院で診断を受けるようにしてください。

トラウマとコンプレックスとの違いとは?

過去に酷い経験などをして精神的に傷を負ってしまったのが「トラウマ」です。「顔の火傷がトラウマになった」などと使われます。それに対して「顔の火傷に劣等感を覚える」というような意味で使われる「コンプレックス」という言葉があります。
どちらも自分自身に対するマイナスイメージを表す言葉ですが、これらの言葉はまったく意味が違ってきます。そもそもコンプレックス=劣等感という意味で使っていますが、これが本来のコンプレックスの意味とは大きく違ってきているのです。
コンプレックスというのは悲しみや愛情といった強い感情が何かに結ぶついている状態のことです。例えばマザーコンプレックス、いわゆるマザコンなんて言葉はかなり知名度がありますが、これは母親に対する劣等感ではなく母親に対する過度の愛着、と考えると頷けると思います。
では何故コンプレックス=劣等感という間違ったイメージが定着しているのかというと、それはコンプレックスの一種である「劣等コンプレックス」からきていると言われています。
このようにコンプレックスは何かに対する執着や憎悪、もしくは愛情の意味なのです。劣等コンプレックスだけに限ってみても、自分自身に対する自信のなさからの不安や自己の否定という意味合いがありますが、これらは自分の感情と密接に結びついています。
それに対してトラウマは自分自身の意識とはまったく別の動きを見せます。自分自身ですら普段は忘れている悲しい記憶が何かのきっかけで再現されるため、自分自身でも何がきっかけなのかわからない上に、それによって引き起こされるパニック障害や感情の麻痺などを抑えることができません。
そしてすでに起きてしまっていて取り戻すことができないような重大な喪失が原因のため、トラウマを完全に抑えるのはかなりの時間がかかります。コンプレックスは種類にもよりますが、執着している対象がはっきりしている分だけ対処も比較的容易でコントロールしやすいのです。